「ほんと、ここのステーキは人を黙らせるわよね」


そう言うと、陶子さんもステーキを口に運んだ。


ああ、この人は、食べ方もきれいだ。


もぐもぐと動く唇を見ていたら、なんだかおかしな気分になりそうだったので、慌てて目をそらし、目の前の料理に意識を集中した。




その後陶子さんは、ニューヨークで見たミュージカルや、仕事で出会った変わった人々の話など、面白おかしく話してくれ、食事の時間は楽しく過ぎていった。


おいしい料理に楽しい会話、陶子さんと過ごしていると、なんだか自分が少し大人になった気分になった。