「自分の父親に電話するのに、秘書を通すの?」


「うん、親父は携帯を持ってないから。
親父に用があるときは、秘書の笹本さんに電話するように言われてるんだ」


「だって、叔父様だってプライベートで出かける時だってあるでしょう?」


「そうだけど、『俺の子供の頃は携帯なんかなかったんだ、その頃は出かけたら電話なんかしないのが普通だった』って」


陶子さんはため息をついた。


「時代遅れもいいところね。
よくそれで瑞江さん納得してたわね」


「諦めてたみたい。
母さんも携帯持ってなかったし」


「え?瑞江さんが?」


「うん」


「あの好奇心旺盛な人が、携帯を持っていなかっただなんて、驚きだわ!」