母の車はまだ手放していなかった。


休日、時々親父が運転しているようだった。


「いいと思うけど、キーがどこにあるか……」


「そう、お父様ならご存知よね?
電話で聞いてみてくれない?」


俺はしぶしぶ携帯で親父の秘書の笹本さんに電話をかけた。


「あ、涼介です。
お仕事中申し訳ありません。
父は今電話に出られますか?」


「……そうですか。
じゃあ、手があき次第、電話をくれるように伝えてください。
よろしくお願いします。
失礼します」


電話を切った俺を、陶子さんが目を丸くして見ていた。