俺はくしゃくしゃと頭をかいた。


「陶子の言う大人はハードルが高そうだな。
…でも、そのときが来たら必ず会いに行く」


すると、陶子は意外そうに目を見開いた。


ああ言えば、俺が諦めるだろうと思っていたようだ。


「40歳のおばさんでもいいの?」


俺はフッと笑い、陶子の頬をつついた。


「あんまり40歳、40歳って連呼すると、天国の母さんが怒るよ」


母は享年40歳。


「あっ」と陶子は口を押さえ、そして微笑んだ。


「瑞江さんはおばさんなんかじゃなかったわ。
私もあんなふうに年を重ねられるかな」