「ねえ、涼くんはどっちのデザインが好き?」


店内を物色していた陶子さんが、ハンガーにかかったシャツを両手に持って聞いてきた。


「どっちって言われても…」


俺が戸惑っていると、陶子さんはシャツを持ち上げて俺の胸の前に掲げ、2枚のシャツを交互に見比べた。


「こっちの方が大人っぽいかな…」


ブツブツ言いながら1枚を戻して、陶子さんはさっさと別のコーナーへと移動して行った。


どうやら、俺の意見はいらないらしい。


だったら、最初から聞くなよ。


それに、俺の前に掲げて、俺の顔を脳内で彼氏に変換してるのか?


俺はマネキン代わりかよ。


なんだか、腹が立ってきた。