ふと、視線を感じて陶子さんを見ると、いつの間にか手を下ろして俺を見ていた。


「涼くん、いい顔してるわ」


にっこり微笑まれ、一瞬返事に躊躇したけど、俺はちゃんと返事することにした。


「もしそうなら、陶子さんのおかげだよ。

俺、陶子さんにいろんなところに連れて行ってもらってすごく感謝してる。

今、母さんにその報告してた」


陶子さんは少し驚いたような表情をしたが、すぐにまた笑顔になった。


「涼くんの役に立てたのなら良かったわ。

でも、私のほうこそ感謝してるのよ、ずっと付き合ってくれて。

でも、そう言ってくれるんならあと二日、最後までよろしくね」


「りょーかい」


俺たちは目を合わせて微笑みあい、その後下山ルートへ向かった。