由美は、うるさいおばさんの見ていない隙に達也の家を飛び出した。


《…タッちゃん…》

これで、よかったんだよね。


「由美?」


えっ…
声のした方に振り向く。


「泣いてんのか!?どうしたッ!!!達也になんかされたとかか!?!?」


そこにいたのは、翔太だった。


「…しょ…た…」

翔太の姿を見ると、押さえ込んでいた感情が一気に込み上げてきた。


「翔太あッ…」


不器用に抱きつく。


「わッ…由美?…大丈夫か…?」


翔太は戸惑いながらも優しくあたしの背中をさすり、話を聞いてくれた。




翔太に全て話せてスッキリした。

そこで疑問が浮かび上がる。


「翔太、どうして達也の家に来てたの?」


翔太と達也は特に仲がいいわけではない。
お見舞いでなければ、何故…


「それはッ…たッたまたまだよ!!!偶然通りかかっただけ!」


翔太がやけにあせりながら言う。


「本当ー?」


「本当!!!!」


由美は翔太を信じることにした。


「あの…翔太?」

「ん?」


「そろそろ…離して…」


「あ…ごめん」


翔太は由美を離しかけて、また抱き締めた。


「え…翔太?」


「…もう少し…このままでいさせて…?」


きゅんッ。


そしてしばらくの間あたし達は、お互いの体温を確かめあうように抱き合っていた。