さえちゃんが、キケン?


翠が、病院。


それは、分かる。


入院中だから。


おばあちゃんがお洗濯?


ハンバーグ……。


「ごめん、あかねちゃん、もう一回」


そこまで言いかけた時、ああーとあかねちゃんの声が遠くなって、見知らぬ声がおれの耳に飛び込んで来た。


『もしもし? どちらさま?』


「えっ……あの……夏井と言いますけど」


おれがどもっていると、その優しい年輩の女性の声のトーンが上がった。


『夏井? あなた、翠の彼氏?』


「あっ、はい」


なぜだかよく分からないが、おれはやたらと緊張していて、心臓がバクバクしていた。


『私、冴子の母親です。えーとねえ、翠の祖母と言えば分かるかしら』


翠の、ばあちゃん?


えーっ、と大声を出しそうになって、慌てて口元を手で塞いだ。


翠やさえちゃんとはまるで正反対の、穏やかでゆったりとした口調だったからだ。


『ごめんなさいねえ。私、お洗濯していて、あかねったら勝手に電話しちゃったみたいねえ』