おれたちはバスに乗り込み、学校に戻って明日の初戦に向けて、最後の練習をした。


練習は15時すぎに、早めに終了した。


おれはその足で、翠の元へ向かった。












病室の前で、さえちゃんとはち合わせになった。


「響ちゃん」


「おす」


「今日は来れないと思ってたのに」


さえちゃんは花瓶の水を変えに行こうとしているところだった。


「うん。今日は試合ないから、練習だけで早く終わったんだ。明日の初戦のために、疲れを残さないようにって」


そう言って笑うと、そっか、とさえちゃんも笑った。


「響ちゃん、なんか、カッコいいよ」


突然、さえちゃんがへんな事を言い出すので、おれは恥ずかしくなった。


「はあ? なに言ってんだよ」


「ううん、ほんとに。ユニフォーム、すごい似合ってる。カッコいいよ」


「いや、そりゃどうも」


恥ずかしくてうつ向いていると、さえちゃんはおれの肩をポンと叩いて、


「翠、待ってるよ」


そう言って、行ってしまった。


翠の手術は、大成功だったらしい。


今のところ、特に後遺症は見られず、起き上がる事はできないが、翠は元気で少し話せるくらいにまで回復していた。


「翠」


病室に入って、おれは息を呑んだ。


翠が体を起こして、窓の外を見つめていたからだ。


「あ……ほ、け、つ」


まだかつぜつが戻らないので、翠はゆっくりしゃべる。


「大丈夫なのかよ。起きてて辛くないのか?」


慌てて駆け寄ると、翠は微かに頷いて笑った。


「そっか。無理すんなよ」


「う、ん」