「きみのゆめ……こがねにそまる……しろいたま」


その一句の下には、小さく小さくP.Sが添えられていた。








P.S
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補欠の一球に
あたしの人生をかけてみようと思います
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みどり
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「翠っ……」


目頭がぐっと熱くなった。


おれは、翠の黒魔術というやつに、まんまとかかってしまったらしかった。


「さえちゃん、ごめん!」


「何? どうしたのさ」


「練習、行ってもいいかな」


紙をポケットに押し込み、スポーツバッグを背負って立ち上がったおれに、さえちゃんは笑顔で頷いた。


「行きな! 翠なら不死身だから大丈夫! 後で連絡入れてあげるからさ」


思いっきり投げてきな、とさえちゃんはピッチャーの真似をして右腕を降り下ろした。


「さんきゅ!」


そう笑顔を返し、待合室のドアを開けて、おれは振り返った。


「おれさ、こう見えても、南高のエースなんだ」


うん、とさえちゃんが微笑みながら頷いた。


「絶対、連れてくんだ。翠を、甲子園に」


約束なんだ、と言い、おれは病院をとびだした。