「エミ遅い」

少し不満げにふてくされる顔がちょっと可愛い。

「先生話長いんだもん」

「そっか。ね、カラオケ行こ」

「うん」

そう言うと、お互いの手が自然に重なり合う。
大きくて、ゴツゴツしてる骨っぽい彰の手。
彰はわたしの肩や腰に腕を回したり、指を絡めたりっていうことはしなかった。
わたしはそれがきらいだった。
一度指を絡められた時、言葉にはしなかったものの気持ち悪かった。
その日から彰はしてこない。
察してくれた事が嬉しかった。
そんな繋ぎ方よりも、この大きくて温かい手に包まれているほうが心地いい。