一年という月日の中で女子が異常にソワソワするイベントのひとつ。
そのイベントの一週間前ともなれば、教室や廊下にいる女子達はピンク色。
雑誌を広げる子もいれば、分厚い本を持ってくる子まで。

「恵美子はチョコレートどうするの?」

昼休みに友達の数人と机をくっつけて、お弁当の卵焼きをつついてると、友達の一人がわたしに話題をふる。
そのイベントとは、バレンタインデー。
みんなは「誰々君に渡して告白する」だとか「何にしよう」なんて話題に華を咲かせている。
わたしは、

「ん〜、わたし料理苦手だし、作らない」

お弁当に視線は向けたまま、興味の無い声を返す。
流石わたし。
わたしの作る卵焼きは絶品。