そうよ、怜治は何も知らない。


「俺…その、」

「何?」

「お前がいないと、結構寂しいんだけど…」

「…え?はい?」

「俺、由美子が来なくなってから勉強に集中できなくなってさ」

「何、それ…?」


やだ…。怜治何言ってんの?やめてよ…そんな事言ったら…。


「自分でもよくわかんなかった」

「…」

「由美子ってさ、俺の事嫌いなの?1ヶ月くらい前から、塾以外で会っても俺の事避けてない?」

「…い、訳な…ん」

「ん?」


私が言った事が聞こえなかったのか、怜治は私の顔に耳を近づけた。



「嫌いな訳ないじゃん!!むしろ、大好きなんだもんっ」

「っ!!」


怜治は大きく目を見開いて、吃驚した。
でも、今の私にはそんなのお構いなし。気持ちを抑えきれなくなっちゃった…。


「いつだって、どんな時だって、考えるのは怜治の事!!いい加減、忘れたい!だって、この気持ちは怜治を困らせるだけだから!私は、中学生で恋しないって決めたから!だから、だから…」


「っわかった。落ち着け、由美子…」


自分でもわかった。迷惑かけたくない。そう思ってたのに、今1番迷惑かけてる。私の目には、もう溢れそうな涙。この涙、もう抑えきれないよ…。



「俺のこの気持ちがわからなかったのは初めだけだから。最近、気付いたんだ」

「へ…?」

「俺、由美子が好きなんだって」

「それ、本当?」

「ん」


怜治は、今にも溢れ出しそうな涙を浮かべた私を、そっと抱きしめた。なんだか、不器用な抱きしめ方だけど、多分怜治なりにこれで精一杯なんだと思う。
初めてこんなにも近くに感じた怜治。温もりって、こんなに暖かかったっけ…。