リビングに入ると、桜子の言った通り食卓に用意されていた。
私はテレビもつけることなく、茶碗にご飯を。
そして、1人でぽつんと食べ始めた。
お母さん、もう仕事に行ったんだ、なんて考えてると桜子が入ってきた。
「どうしたの?」
「由美子、本当に塾やめるの?」
「…うん」
「何で?」
苦笑すると、桜子は私の向かいに座った。
「…勉強嫌いだからさ」
「嫌いだからこそ、好きになろうとしない訳?」
「嫌いだからムダじゃん。好きにはなれないの」
「そうやって、何でもかんでも決め付けてると、いつか後悔するよ」
桜子は私の目をじっと見つめた。
私は思わず目を逸らしてしまい、なんだか負けた気分になった。
「由美子が止めるなら、私が入るよ」
そう言って、桜子は自分の部屋へと戻った。
何が"後悔するよ"よ…。自分はできるからって。あれ…勉強できるんだし、塾入る必要なくない?
私はご飯を食べ終えて、しばらくその場でボーっとしていた。
「…あれ、今何時…―」
気付くと、もう10時ちょい前だった。
家にはもう桜子はいなかった。
私は家の鍵をしっかり閉めて、マンションを出た。
少し歩いたら、見える例の公園。
ベンチにはもう…―あの人がいた。
「お、久しぶり」
そう笑って手を軽くあげた怜治。
私も、そっと手を振り返した。
「久々だね、どしたの?」
「いや、どしたって…そっちこそ」
「私は全然大丈夫だけど…」
「塾きてないじゃん」
「ただ…勉強が、嫌いだから」
「本当に、それだけの理由?」
「、…うん」
それだけって…。何それ?私の気持ちなんて、何も知らないくせに。