繋がれた手が…無償に苦しかった。何でか判らない。でも、とにかく苦しかった。
胸が痛んで、もどかしくて、でもどうしようもなくて…。

由美子達のいる所へ行くと、意紅琉センパイは手をそっと離した。
そして、私を見て

「もう大丈夫か?」

と囁いた。その囁いた声は、私にとって元気の原料だ。私は黙って“うん”とだけ頷いた。



「きたきた!癒衣里ぃ!遅かったじゃん」

「あ、うん…ちょっと」

「…?癒衣里ちゃん…?」

山岸先輩が、私の顔を不思議そうに見た。


「っはい?」

「顔…顔色悪いよ?」

「ホントだっ!ちょ、大丈夫!?」


そう言って由美子は、私の方へと駆け寄るとオデコに手をやった。


「熱は…ないみたい?」

「あ、いや…大丈夫だよ」

「そう?ならいいんだけど…」



どうしたんだろう。もしかして、さっきの女の子の先輩の事気にしてんのかな?
自分でも判った。先輩といることで、先輩に迷惑かけてるなって。



「癒衣里?…考え事?」

「あ、ううんっ。なんでもない!」

「…何かあるなら、あたし聞くよ?」

「大丈夫だよ!ゴメンね…心配かけて」

「そんなの気にすんじゃないわよっ」

「ありがとう!気が向いたら…ね」

「判った」


由美子は、私にそうだけ言って優しく微笑んだ。
微笑んだ顔は、いつもより優しく見えた。
由美子にも迷惑かけてるね。私。
こんな私でも、傍にいてくれて…私嬉しいよ。
私、今人間関係の複雑さを知った気がする。