なんで?と思い、まぶたをそっと開けると、私の前には誰かが立っていた。


「何してんだよ…」

「っ…安陪…」



女の子の先輩が放った言葉を聞き、私は驚いた。
そう。私の前に立っていたのは、まぎれもなく意紅琉センパイだったのだから。


「お前ら、可愛い後輩に何しようとした?ぁあ?」

「…っく」

「最低だなっ」

「……」


先輩達は黙り込んでた。私を睨みながら。
すると、意紅琉センパイは私の前にしゃがみこんで、私の顔を覗き込んできた。


「大丈夫か?ほら、立てるか?」

といって、私の手を持って立ち上がると、腕を引っ張られ連れてかれた。その時、後ろから聞こえてきたのは先輩達の声だった。


「なんでそんな奴かばうのよぉー!!」

「そんなのの何処がいいのよっ!?」

「安陪ぇえーー!!」


3人口々に言っていた。
私の心は、罪悪感と嬉しい気持ちが変に混ざって苦しかった。
まるで、心臓を手でもたれている感じ。




意紅琉先輩は、今どんな気持ちですか?

意紅琉先輩の心には、誰がいるんですか?

意紅琉先輩には、好きな人がいるんですか?





意紅琉センパイは…―


―…私のことどう想ってます?





私は、どんどんと前に進むセンパイの背中を見てそう問い掛けた。心の中で。
どんなに想っても、口にしなきゃ伝わるはずがないのに。