「うおっ。すげえな、癒衣里が作ったの?」

「はい…。今日の4時に起きて作りました」

「そんな朝早くからかよ!?すげぇな;体育祭なのに睡眠足りてるのか?」

「た、多分…」

「おいおい」



『アハハハハハ』なんて2人で声を合わせて笑っていられる事がなんだか、一生の宝モノに思える位だった。






「…ちょっとトイレ行ってきます」

「いてらーっ」





そう言って、私は楽しくお弁当を食べているみんなを後にした。

すこし歩くと、みんな笑顔でいっぱい。体育祭ってこんなに楽しいんだなって思った。恋人同士て食べてたり、友達同士だったり、グループで食べてたり、人それぞれだけどやっぱりみんな笑顔で溢れてる。


見上げると、太陽があって、雲が少しだけまばらにある。そして、さわやかな風に吹かれて、靡く髪。全てが新鮮。いつもと同じかもしれない。でも、最近はその同じ事でも楽しめるようになったんだ。

意紅琉先輩と出会ってから…見方全てが変わった気がする。私自身も、少しだけ前向きになれた。



-


私以外誰もいないトイレの鏡の前で、今の自分をじっと見る。
見た目は、何も変わってない。でも、中身は…―。
目を閉じると、見えたのは、



「意紅琉先輩…」



目を閉じれば、意紅琉先輩の姿、形、声全てが聞こえる、見える。
私の中は、もう意紅琉先輩で埋め尽くされていた。
まだ3ヶ月くらいしか過ごしてないけど、こんなにも私の中に先輩がいる。
あの日、私の携帯にメールが届いたあの日から、先輩との距離をどんどん縮めていった。
今の今までの記憶が全て、瞼に映し出される。

こんなにも誰かを考えてるなんて、私は初めて。
なんだか気が重いけど、どこか喜んでいる。
今までなかった気持ち…これって一体なんなんだろう。