母の動きが止まった。

「覚えてないの。。。?」彼女は不安そうに希の顔を覗き込んだ。

「うん。」


本当になぜ病院にいるんだろう。

おなかが少し痛い。

食中毒にでもあったのだろうか。

だったらなぜ何も覚えていないのだろう。。。?


母は望みの手をとった。顔は微笑んでいたが、何か苦しげでもあった。

「あのね。希ちゃんは、階段から落ちたのよ。」


そうだったのか。。。

希は真剣に思い出そうとした。でも何も出てこない。

どこの階段から落ちたのだろう。。。なぜ階段などから落ちたのだろう。。。


ズキンッと痛んだ、頭を希は抱えた。

「いいのよ。」母が希の肩に手を回しながら言った。「無理に思い出そうとしなくても。」

「うん。。。」


希には聞こえなかったが、母は小声で呟いていた。

「一生思い出さなくていいから。」