昼休みも終わり、早速膀胱洗浄が始まった。良い機会だからとメンバー6人全員で見学する。この場合、患者さんの羞恥心を考えると、そんなに大人数では見学しないのだが、意思疎通のはかれない方だったので、申し訳ないが勉強させていただいた。ちなみに膀胱洗浄とは、尿道に管が入って固定してあり、これを「バルンカテーテル」という。バルンを長期に留置していると、尿が汚くなり、混濁したり、浮遊物が増え、管の中が詰まることがある。だから大きい注射器に似たもので、生理食塩水を入れ、また抜く。つまり管と膀胱内を水ですすぐのだ。私たちは初めて見るこの処置を、真剣に見ていた。

 膀胱洗浄が終わると、3時のカンファレンスまで、患者さんとコミュニケーションをとるように言われたので、お話しのできる患者さんのところへ行き、談笑した。本当は看護に直結するような話でもすれば良かったのだが、たいした知識もないし、患者さんの方も明らかに私たちのことを新米のぺーぺーだと思っているので、冗談話をしていた。だが実はそれでよいのだ。患者さんの気持ちが和らぎ、信頼を得られるなら、どんな会話も看護になり得る。

 3時になり、婦長さんと主任さん、教務の先生とメンバー6人でカンファレンスが始まった。今回の実習で何を学んだか、一人ずつ述べてゆく。司会はリーダーがする。この頃はまだ看護のなんたるかも知らなかったので、ひたすら見た処置のことばかり言った。すると主任さんから、

「どんな看護をしましたか?」

と聞かれ、口ごもってしまった。処置イコール看護と勘違いしていたので、答えようがなかった。それでみんな黙っていたら、考察に書くように言われた。