と質問する。こっちは初めての患者さんの清拭で四苦八苦しているので、清拭に集中したいのだが、

「肩と肘と仙骨です。」

と答えた。

「そうね、それから背部にもできやすいし頭にできる人もいるのよ。」

と先生は教えてくれた。褥瘡は老人看護をするうえで切っても切れない関係だ。何のことはない、骨が突出している箇所すべてが褥瘡誘発部位なのだ。だから体位変換は2~3時間ごとにしなければいけない。実習前に、グループ研究で「褥瘡」をテーマにしたことを思い出した。みんなで交代で3時間同一体位となり、圧迫部位の温度を測定した。温度に違いはさほどなかったが、2時間頃から下になっている部位が、ビリビリして痛かったのを覚えている。だから本当は2時間ごとの体位変換が必要なんじゃないかと思ったが、この患者さんは3時間ごとの体位変換だった。仙骨や肩など骨が突出したところを観察したが、褥瘡や発赤は無かった。上半身の清拭が終わり、新しい衣類を着てもらう。次は下半身だ。

「おしりに発赤はない?」

「はい。」

と会話をしながら初めておむつをあてる。下半身も終了。ついに全身の清拭が終わり、音片付けを済ませると、もう11時半だ。担当ナースに報告しなければならない。私はナースを呼び止めて状態報告をした。痰がらみは無かったこと、全身清拭をしたことを伝えた。ナースは質問無しに、

「わかりました。」

と言ってくれた。昨日のナースとは違う、優しい人だった。

「午後から膀胱洗浄を一緒にやりましょう。」

と言ってくれた。