矢継ぎ早に質問されて、答えられない私。第一サクションて何?ここでナースに怒られてもいいから質問すれば良かったのである。だがすっかり萎縮してしまった私は押し黙ったままだった。すると担当ナースは、

「いいよ、私が直接観察するから。」

と言い、去ってしまった。確かに患者さんのバイタルは測ったけど、患者さん本人の状態を観察していなかった。そんな余裕はなく、夜間の状態を参考に何を観察して良いかまで判断できない。看護の専門用語もわからない。そうこうしているうちに昼となり、リーダーがみんなを集めにきた。全員で

「昼休みに入ります。」

と挨拶をし、寮へ戻った。昼食時、みんな続々と帰ってくるが、表情は硬い。たぶんみんなも同じような状況だったのだろう。実習がこんなに大変とは思わなかったし、ナースがあんなに厳しいとも思わなかった。私たちが思い描くナースのイメージは、どんなときも優しい。だがそれは、自分が患者さんだからなのだ。それにあんなに技術演習をしたのに、想像以上に自分が動けないのがもどかしい。ナースは人様の命を預かっているのだ。学生に厳しいのは当然かもしれない。

「早く実習したいね。」

と言っていたのが、遠い昔のようだ。病棟には1時前には戻らなくてはいけない。

「嫌だなあ、行きたくない。」

「予想より大変だよね。」

などとメンバー同士で話をしながら昼食をとったが、食欲が無い。やがて12時50分になった。

「そろそろ行こうか。」

とリーダーの子が言い、みんな立ち上がった。はずしていたエプロンをつけ、1時の5分前に再び病棟へ戻った。