【バタン】


背中で扉がしまる音を感じると私は布団から顔を出した。


私の目からは涙が溢れて止まらなくて。


全然…幸せなんかじゃなかった。



あれから嫌がる私を無視し、奥寺さんは行為を続けた。

行為を終えると奥寺さんは部屋を出て行った。



嫌がってること、気づいてた。

絶対に気づいてた。


それなのになんで、止めてくれなかったんだろう。



あんな奥寺さん…好きじゃない。

愛してなんかいない。


優しさがこれっぽっちも見受けられなくて。

ただ虚しいだけで。


心にポッカリと穴が空いた。

そんな、気分。



服を着ないまま、鏡の前に立つ。

胸のところには奥寺さんの跡。


今まで1度だって付けられたことがなかった。


奥寺さんの跡を擦る。

消したかった。


今日のことは…夢だと、思いたかった。



でも…奥寺さんの跡は消えてはくれなかった。