「何言ってるのよ~泉くん」
さっきのお客さんはさりげなく、泉さんにボディータッチ。
ああいう仕草ができる人って…きっと、モテるんだろうなぁ…
そんなことを、頭の隅で考える。
『冗談ですってば』
泉さんは笑って返す。
あんな風に泉さん、笑うんだ。
知らなかった。
私が知ってる泉さんは司書の泉さん。
一人称は『僕』で。
眼鏡をかけてて。
何より、あんな笑顔を見せない。
ここにいる泉さんと同じ人のはずなのに、
まったく別人のようだ。
『どうしました?すみれさん?』
ハッと我に返ると私の顔を覗き込んでいる泉さん。
「あ、いや…なんでもないです。」
いつの間にこっちに来ていたんだろう。
ビックリしたぁ…
『大学での俺とここでの俺との違いにビックリしてたんでしょう?』
手元にあった視線を驚いて泉さんに向ける。
そうすると何もかも分かったような目で私のことを見ていて。
どうして…分かるんだろう。
なんで、私の考えてること、分かっちゃうんだろう。
さっきから疑問しか浮かばない。