『すみれさん、ヘンなこと聞いていいですか?』
「なんですか?」
首を傾げると
『さっきの男の人はどうしたんですか?』
その質問にドキッと心臓が鳴る。
でも…仕方ない、か。
だって1回来て帰ったのにまた来るなんて…おかしいもんね。
「まあ…いろいろと?」
なんとか誤魔化そうと頑張る私。
きっと、無理だろうけど。
『まさか…ケンカ、ですか?』
なぜだか微笑んでいる泉さん。
もしかして…おもしろがってる?
「ケンカなんてしてませんよ」
そのときカウンターの端から
「泉くん!」
と、呼ぶ声。
『ちょっと…すいません』
軽く頭を下げた泉さんは呼んだお客さんのところへ行く。
「泉くん」か…
どうしてだろう。
どうして、悔しく思ってしまうんだろう。
お客さんなら、「くん」付けで呼んだっておかしくないのに。