『あっそ。

らしくないこと言ってんじゃん』


顔を上げるとバカにしたような笑みを浮かべている貴大がいて。

いつもだったら殴り飛ばそうとか思うが、今日はそんな元気もない。



『俺だったら、強がってでも逢いに行くけど。』



『なんも知らねぇヤツが言うんじゃねぇー…』


怒鳴るにも怒鳴れない。

魂が今にもカラダから抜けていきそうだ。



『知らないよ、確かに。

だって洋、俺になんも教えてくれないじゃん。


だから俺はなんにも知らない。

知らないけど1つだけ言わせろよ』




『逃げてちゃ、始まらない』



………ふっ


『なんだよ?!鼻で笑うか?!』

貴大の言葉を聞いて俺は思わず鼻で笑う。



『だって決めてやった、みたいな顔してっけどまったく決まってねぇーんだもん』


貴大は俺を睨む。


だいたい、そんな言葉…言われなくても分かってる。

でも今は逃げさせてくれよ。