「ご飯、食べにおいでって姐(ねえ)さんからの伝言だった」

「それを先に言ってよっ」

姐さん、というのは、現銀組総長の奥様。
つまり、大雅の母親にあたる人だ。

私は慌てて部屋を出る。
パパと並んで、広いお屋敷を歩くのだ。

パパはさっきまでとはまるで別人のように、甘いマスクをきりりと引き締めていた。
女性には笑顔を安売りするけど、男に売っても意味が無いから笑顔は見せない主義なんだって。

言ってることは全然分からない。

とはいえ、すれ違う皆が、パパに深々と頭を下げていく。

こういうシーンを見ると、ああ、パパってこの世界では実力者なんだなーって思うんだけれど。

だからといって、娘としての私の父への尊敬度があがるかといえば、別に。
そういうことではないのです。