ふぅ、と。
部屋の外に紫煙を吐き出して、パパが私を見た。

優しさを閉じ込めたような黒い瞳。
いやいや、騙されてはいけない。

そういう瞳を作るのも、彼の得意技の一つなのだから。

「大雅にそう言えば?」

「言ってもどうしようもないじゃない。
私の誕生日は、クリスマスなのよ」

パパは瞳を丸くして、それから笑うと煙草を屋敷の外に放り投げて私の傍に来た。

小さい頃からそうするように、頬ずりをしてくる。

「ちょちょ、ちょっと、パパ?」

「けなげだねぇ、うちのお姫様は。
とても俺の遺伝子が入っているとは思えないな」

「案外、入ってないんじゃないの?」

だといいのに、と願いながら私は軽口を投げつける。
パパの瞳が僅かに煌く。

そうして、私の耳の傍に唇を寄せた。

「だったら今すぐここで押し倒せるのに」

脳震盪を起こしそうなほど、甘い声を吐息混じりに囁いてくるその変態ぶりに眩暈を感じずにはいられない。

……それは奇遇ね。私も今すぐ殴り倒してあげたいわ、パパのこと。

色魔だ。
本当に、コイツの女好きはただモノではない。


そして。
確かに少しだけ、あやかりたいな、とも。
思ったりした。