しかし。
残念なことに、彼はこの組ではものすごくキーパーソンで。

帰ってきたということは、組の一大事である、というパターンが結構多いのも事実。

「何か、組に問題が?」

私の問いに、パパがにこりと笑う。
この笑顔に大抵の女性のハートがぐらつくことを、彼は十二分に知っていた。

つまりは、私にいわせると『ろくでもないほど素敵な笑顔』。

「いや。
俺の愛娘に問題が」

「え?私?」

想像外の答えに、驚いて目を丸くする。

「もしかして、次期総長が何か言ってたとか?」

大雅のことは、次期総長、と呼ぶのがここの通称だ。
パパがにこりと口角を上げる。

「よく分かっているじゃないか。
大雅をあんなに振り回せるのはうちのプリンセスだけだよ」

ちっとも嬉しくない。

「いいじゃない。どうせ後二ヶ月弱なんだから」

来月末には彼は。
誰かのものになってしまうのだから。

ふうん、と。
パパは意味ありげな視線を私に向けると、部屋の窓を空けて煙草に火をつける。

「それで拗ねてるんだね、お姫様は」

「そうよ、悪い?」

どうせパパにはお見通しだろう。

昔から、パパが居なくても私は平気だけど。
大雅が居ないと大騒ぎしていたのだから。

私は悪びれずにそういい、手持ち無沙汰なのでその辺にあったぬいぐるみを抱きしめながら、パパの方に視線を投げた。