そして今は放課後


教室で待っててって書いてあったよね?


でも私以外の生徒の姿はこの教室にはない


放課になって軽く一時間は経っている


騙された


そもそも中沢裕紀って誰よ?


信じて待つべきじゃなかった


帰ろ…


そう思いスクールバッグを手に取り歩き出す


「あれ、帰っちゃうの?」


誰もいないはずの教室のどこからか男の声がする


どこにいるの…?


「後ろ」


私の心の声に答える誰か


後ろって…


私は慌てて振り向いた


「ども、中沢裕紀っす!」


…軽そうな男


にこやかな笑顔を浮かべている彼は“なかざわゆうき”と名乗った


身長が人並みより高い彼と私では必然的に見下ろされる形になる


「ずーっと気付かないからどうしようかと思った」