子牛の丸焼き、その片足を引きちぎってかじりついていた俺は、そのまま動きを止めて女の顔をまじまじと見る。

「…そうだけど、あんたは?」

「……」

音もなく会釈して、女は名乗った。

「私は…ドーラで武器商を営んでいる…ナハト・リアリー…よろしく」

抑揚のない声、微動だにしない表情と姿勢。

ドーラの人間と聞いて、妙に納得した。

東に位置する産業国家、ドーラ。

この世界で最も文明の発達した地域で、機械仕掛けの乗り物や、火薬を利用した兵器なんかを開発している。

いまだに体一つで魔物を狩って生活している狩猟民族の俺達ファイアルの民とは、ある意味対極に位置する連中だった。