「どこかに行くのか?」

俺の問いかけにナハトは頷く。

…今彼女は、環境汚染についての研究をすすめているらしい。

自然環境に影響を与えず、尚且つ様々な産業でドーラの発展を推し進めるべく、仲間と共にプロジェクトを遂行しているというのだ。

小難しい事はよくわからない。

ともかくその仕事の途中でファイアルに立ち寄ったのだという。

「そうか…ナハトはナハトで頑張っているんだな」

笑みを浮かべる俺に。

「何でそんな他人事みたいな言い方…?」

ナハトは首を傾げた。

「は?」

言っている意味がよくわからない。

そんな俺の目の前、テーブルの上に、彼女は金貨がぎっしり詰まった小さな皮袋を置く。

どすん、と音がした。

「仕事の依頼…今アキラが請けている仕事を全て断って…私がアキラを雇う」

「はぁ!?」

ドーラ人らしい頑固な物言いで、ナハトはとんでもない事を言い始めた。

「プロジェクト遂行の一環として…世界中…様々な国の文化を…見て回りたい…アイスラにいるという識者ナーダの知識も借りたいし…ライストの霜刃セリーヌ率いるガーディアンの組織力も参考にしたい…幼い頃に歌聖大会で優勝したというフーガのイルヴェントという少年…彼の歌声には個人的に興味がある…ドーラ製の拳銃の名手グストは、ドーラで開発した火器のテストに立ち会ってもらうのもいい…」

一息にまくし立てた後、ナハトは俺に微笑みかけた。

「アキラ…私の護衛を…お願いしたい…」