食事を済ませてのんびりとくつろいでいると。

「?」

背後に足音が近づいてきた。

上等な革のブーツの音。

床を踏みしめるその音は、あくまでも軽い。

振り返った俺。

その目の前に立っていたのは女だった。

黒いベレー帽、かっちりとした黒のスーツ。

その無表情な顔は、真っ直ぐに俺を見つめている。

「『火の玉』…アキラ・ウェズリーは…貴方…?」

そう言い放った直後、微笑を浮かべる女。

…俺もニッと笑い返した。

「ナハト!」

汚竜討伐以来の再会だった。

少し髪が伸びているが、相変わらずの仏頂面。

いや…初対面の時より表情は豊かになっただろうか。

「どうしたんだ、ナハト!まぁ座れよ!」

俺は隣の椅子をすすめるものの。

「いい…すぐに出発しなければならない…」

彼女は呟いた。