「隼人。指示を無視した事実はどう釈明する〜?」
高田監督が割って入った。
「優勝してみせました。それが全てです」
隼人は答えた。
岡崎は反論する。
「結果じゃない。チームあってこそのレースだ。そのチームをお前はブチ壊してしまいかねない」
「レーサーがいなければチームは成り立たない」
隼人が逆に主張する。
高田監督が複雑な表情を見せて言った。
「鶏が先か〜卵が先か〜。水掛け論だな…」
「卵がレーサーでチームが鶏です」
隼人は冷静に応えた。
岡崎が納得していない。
「隼人。お前は卵か?。だったら育てたチームが鶏なんだろう?」
「金の卵だよ」
小早川が口を挟んだ。
「俺は確かに卵だった。だが今は鶏なんだ」
チームの皆が首を傾げた。全く意に解さない。
「どういう事、それ?」
小早川が問い掛けた。
「レーサーとして〜。卵は富田なんだ…」
隼人は応える。
「ああ…」
と高田監督が納得したかのように言った。
「解った、隼人。今日のレースは反面教師〜だな」
「ハイ」
「良し、行って来い。表彰式が始まる」
立ち上がり、ピットを出かけた隼人が振り向き言った。
「富田。お前が優勝していたレースだ。それを忘れるな」