「隼人〜」
と後ろで小早川が叫んでいる。それを意ともせず隼人は富田の元へ向かった。
富田がためらいの表情を浮かべている。
隼人はヘルメットとマスクを外して言った。
「甘いよ、富田。あんなに膨らんじゃ後ろのヤツに道を譲っているようなもんだ。ハンドルを切る必要もない。あれだけ開いてたらクラッシュはしない。インに寄せれば俺は抜けなかった」
俯く富田。
「…でも…安全を考えれば…」
富田には富田なりの釈明があるだろう。確かに万一を考慮すれば富田の発言は答えになる。
「隼人!、何、言ってんだ!。それがチームメートに対する発言か!」
「済まない、岡崎。だが言わせてもらう。これはレーサー同士の会話だ」
無言の富田に隼人は発言を促す。
「さあ〜、富田。言ってみろ、本音を」
隼人は床に座り込んだ。
頼りなげに富田は口を開いた。
「優勝…したかったです。今日は絶好のチャンスと思ってました…」
「安全運転でか〜」
「雨さえ降らなきゃ〜」
隼人は睨み付けて言った。
「レースはドームでやるのか?」
富田はますます意気消沈してしまった。
「…俺…このチームが好きなんです…。隼人さんのセカンド、光栄に思ってるんです!」