各マシンが次々とピットインするうちに、隼人は富田のすぐ後ろ2番手に上がった。
水しぶきを上げながらマシンが走る。観客は、待ってましたとばかりに興奮し、総立ちになった。
富田のマシンは明らかにスピードが落ちている。そしてヘアピンへ〜。左カーブ、やや右へ膨らんでしまった。その直後、ミラーに映ったのは、強引にインを突いて来た隼人のマシン。
(クラッシュする!)
富田は慌ててハンドルを切った…結果…マシンはスピンしながらコースアウトしてしまった。
そして隼人が先頭に立ち、そのままフィニッシュした。
「ワー」と、湧き上がる歓声。
(そんな…。いくらなんでも…隼人さん…)
ウィニングランする隼人はクールに歓声に応えていた。
富田は立ち尽くしている。マシンが動かないのだ。
周回してきた隼人が富田のマシンの横で止まる。
「いかれたか?」
「ハイ」
「待ってろ、クルーを呼んでやる」隼人がマシンから降り、ピットへ向かって、大きく手を振った。
「やってくれるね」
小早川が嬉しそうに真っ先にピットを飛び出した。他のクルーも後に続いた。
観客席では隼人コールが起きている。
「富田、先にピットへ戻っていろ」
隼人が再びウィニングランを始めた