東京のある住宅地に、やや古びた公団住宅や高層マンションが立ち並んでいる。
決して活気があるとは言えない街だが、生活必需品を買い揃える程度の商店街はある。むしろ、落ち着いた暮らしには丁度いいのかもしれない。
そして住宅地の一画にある公園…。町民の憩いの場として用意されたのであろうが、殆ど人影は見えない。ただ一人、若い女だけである。
その女はCDラジカセから流れる音楽に合わせて踊っている〜。楽しそうに時折笑顔を浮かべながら〜。
公園脇の道路をポルシェが走って来た。運転している男は、女を目にするとスピードを落とし停車した。
女は踊っている。
男は呟いた。
「…昨日も…、どころじゃないな〜。殆ど毎日だ」
女は男の視線に気付くと踊りを止め、ジッとポルシェの男を見ている。
男はポルシェを走らせた。何故か笑みを見せて〜。
ポルシェが走り去ると、女は再び踊り始めた。
「…チャンス…。今は野次馬は邪魔」
男はポルシェの運転席で、愉快そうにキラキラと瞳を輝かせていた。