波瀾に満ちていた、禁の人生は幕を閉じる。 幸か不幸か、禁は最後まで仲間の名前を呼ばなかった。 あるいは、呼ぶ必要がなかったと思われる。 誰にも心を開いては、いなかった。 凍り付いた魂は禁の運命を止め、過去へとしがみつき、未来へ背を向け、亡霊と化す。 死の間際に、禁が求めたモノは、父親。 皮肉にも、最も、過去を象徴する存在である。 しかし、誰も知る由も、無かったのであった。