「紙洲親分っ!!助かりましたぁ~。いやぁ~、さすが……」
誠次朗は作り笑いを浮かべると、慌てて紙洲の元に駆け寄り、口を開く。
その場を取り繕い卑屈に縋ろうとする姿は、人間の根底にあるモノ。
己の欲望に従う者ほど、強者に取り入る。
それでも、まだ、誠次朗の方が幾分ヒトらしかった。
人に害を成し、どんなに疎まれようが、ソレは、生命には関わらない。
だからこそ、扱える。
常識を超えた存在は、人の秩序を乱す。
紙洲は握っていた十手を誠次朗に突き付け、口を開いた。
「衛藤屋ぁっ!!二度は無いと思えっ!!商いを改めねぇと……、次は、死ぬゾ!!」
紙洲の怒声に、誠次朗は顔を青ざめさせ、ただ、怯える。
普通の人間の、反応。
ヒトの理が通用しない者は、人外のモノ。
化け物は、街にとって、悪である。
紙洲は五人の侍を見下ろしながら、思案を巡らすのであった。