「おそらく、黒鬼を倒した男の事だろうよ……?闘華は虚飾に惑わされずに、物事の本質を見抜いているのかもしれんな」
鬼人は、前だけを見据え呟く。
闘兵衛の評価が、鬼鴉の誇る紅拳と並んでいる事は、鬼人にとって面白く無い事実である。
「試験のつもりで、尋ねたんですが……」
ロインは、独り言のように口を開いた。
「ロイン、覚えておけ。人を試すという事は、己も試されるという事になると、……な?」
鬼人は肩越しにロインへと視線を送り、呟く。
ソレは、もっともらしい言葉ではあるが、まっとう出来る人間は少ない。
「ハイ、……肝に命じておきます」
ロインは静かに頷くと、そう答えるしかなかったのだった。