「確か、闘兵衛……、と名乗っていたな」



「……っ!?」


鬼人から齎されたその名に、桃華は今までで一番の衝撃を受ける。



(バカな!何故、闘兵衛が……、約束?……まさかっ!?)



桃華は混乱する思考をまとめ、口を開く。


「……妹に迷惑を懸ける兄を殴ってやる。と、私に約束してくれました」



「アッハッハッ!!」



この答えには、さすがに鬼人も笑ってしまう。


たかだか個人の感情が、島国の人間が、世界を股に架ける人物に対し、殴り掛かるというのだ。


コレほど、滑稽な言動は無い。



「……闘兵衛は、緒方殿を倒した男です」



ひとしきり笑う鬼人に、桃華は感情を押し殺すかのように無表情のまま、呟いていた。