「……鬼鴉……」
桃華はほつろびを紡ぐように、真実を口にする。
「……そこまで知っているのか?そう、私の名は鬼人。鬼鴉軍の創設者にして、総帥だ」
鬼人は少し驚きながら、冷静に、全てを語った。
「……」
桃華は何も言わず、ただ無言で目を綴じる。
謎は解け、明かされた事実は重圧となり、桃華にのしかかった。
偶然か、ナンの因果か、当事者に関係する者。
鬼鴉という、発端。
「無理矢理、船に乗せておいて言うのも悪いが、お前には、私の手助けをして欲しい。それが兄である私の願いだ……」
深刻な表情を浮かべて、鬼人は、申し訳なさそうに口を開く。
「……少しだけ、刻を下さい」
桃華は目を綴じたまま、返答する。
渦巻く感情に、今はソレしか言えなかった。