黒鬼と闘兵衛による力競べのような膠着状態が、続いている。
「……」
黒鬼は、闘兵衛に見覚えが無かった。
勿論、鬼人にもない。
途中で屠った人間の事など、道端の石にも等しかったからだ。
「……あの時、防ぐのが間に合わなかったら、殺られる所だったゼ」
黒鬼に喰らった奇襲を、因縁をつけるような口調で愚痴にする闘兵衛は、刺叉に渾身の力を込め、押し出す。
「……っ!?」
しかし、黒鬼はびくともしない。
闘兵衛は、唸らざるおえなかった。
顔色一つ変えず、黒鬼は刺叉を左手のみで押し返えす。
さらに右手に持つ金砕棒を振り上げると、闘兵衛の頭上に、高速で振り落としていた。