ソレもそのはず、この時代の日本人は長期の鎖国状態にあり、一部の人間にしか外国人を見る機会が無い。
しかも、身の丈を越える大男で黒人などは、もってのほかである。
全員が全員、黒鬼を見て化け物、鬼と叫びながら硬直していった。
そして、その硬直が命取りとなる。
自殺者のように、わざわざ死んで逝く役人達の姿を見て、落胆し呆れ果てる鬼人はある人影に気付き唸っていた。
「っほぅ……?」
その人影は刺叉を構え駆け抜ける疾風のように、黒鬼に向かって行く。
『ガシィッ』
寸前の所で、黒鬼は迫り来る刺叉を左手で掴み、止めていた。
「……?」
「テメェっ!!……アレで終わったとでも、思ってんのかっ!?」
闘兵衛である。
少し驚いた黒鬼に対し、闘兵衛は怒声を上げていた。