「余計な詮索は、身を滅ぼす……。と、言いますが……」


冷静に冷酷に、華やかな姿からは想像できない程の口調ではあったが、少しだけ悩んで、ロインは言葉を続ける。



「カレは、元黒人奴隷。奴隷船で輸送されていた途中、脱走したのよ。全ての船員を……、皆殺しにしてね」


威嚇、であろう。


情報のやり取りだけで、鬼鴉の恐怖を与える事が出来れば、ロインにとっては万々歳である。



「屈強で名を馳せる奴隷輸送船の船員を、両腕に施錠を掛けられたまま、素手ダケで全滅させたのだから……」



ロインの締めの言葉に、ジェノスは青ざめざる負えなかった。


ソレもそのはず、海賊が襲わない船に軍艦と奴隷船がある。

軍艦は勿論の事、奴隷船は動く監獄であったからだ。


その動く監獄を、黒鬼独りで潰したのだから、それは一騎当千の戦士だと説明するのに、充分であろう。



「……とんでもない兵器を、島に持ちこんじまったネェ?」


ジェノスは半ば呆れて、感想を漏らすのだった。