紅拳はクスリと苦笑を漏らすと、口を開く。
「しかも、褒め上手でもあるのだな?」
ジェノスのおべっかが、過大で大仰なモノではなかった。
全く隙の無い立ち居振る舞いで壁にもたれ掛かる紅拳は、その動きだけで拳法の達人である事を、皆に報しめる。
ジェノスは紅拳の言葉に満面の笑みを浮かべ、話しを促す。
「私の知るかぎりでは、最高の肉体と……、とてつもない潜在能力を持つ人間としか、言いようがないわね?」
一つ区切りを置き、紅拳はさらに続ける。
「極論を言わせてもらえばナイフ一本、木片一個持っても、最強という事かしら……?」
紅拳は壁から背中を離すと、ジェノスの側に歩み寄った。