『ビッ』



その皐月と鴉の攻防の間に、割って入るように、闘兵衛の左拳が鴉の顔面を狙い、放たれる。


が、拳は鴉の外套のみに掠り、空を切った。


瞬間、闘兵衛と鴉の眼光が交わり合う。


怒りの形相を浮かべている闘兵衛に対し、鴉は少し驚いた表情を作った。


さらに鴉は、闘兵衛らと距離をとって間合いから離れる。


危機を回避したのだろうと、銃佐ェ門と桃華は安堵の息を漏らしていた。



しかし、鴉の左手には、いつの間にか太刀が握られている。


両手にかざす二刀の太刀は、まるで、怪鳥が広げる翼のようであった。