「……」
ロインは黙して何も語らず、眉間に指をあてる。
「来客、か……?」
落ち着いていた鬼人の雰囲気から、疑問を持ちながらも黒鬼はロインに、問い掛ける。
「確証はありませんが、準備だけはしといて下さい……」
すぐに冷静さを取り戻したロインは、淡々と口を開く。
「……誰が来るんだ?」
訝しがりながらも、黒鬼はロインに問いただす。
「我々の敵、です」
ロインは、はっきりとそう声にすると、無表情のまま、その場を立ち去って行く。
「……我々の敵……」
独り残された黒鬼は、おうむ返しのように呟き、闇に消えたのだった。