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 そのころ麟紅は、商業区の人気のない路地裏にいた。

「ったく、呼び出しといて遅刻かよ」

 ポケットから懐中時計を取り出し、舌打ちする。
 その時計をもとのポケットにしまうと、街の音が響く方から一人の少年が駆けてきた。

「ごめん! 御冠神楽君、待たせちゃったかな……?」

「あぁ、待ちましたよ」

 ギロリ、と右目で少年を睨んだ。ひゃあ! と少年が身をよじる。

「それと俺のことは麟紅って呼びゃあいい。そっちのほうが呼ばれ慣れてるし」

「あ、あうん」

「で、今回はいったい何の用だ? まさかまた路地裏実態調査とか言わねぇよな?」

「え、あう……ごめん」

「ごめんってなんだ!? ってこたぁ遠まわしにまた路地裏調査やるって言ってるようなもんじゃねぇか!!」

「うわぁあ! ごめんなさいごめんなさい!!」