*

 帰り道に、麟紅は寄るところがあると言って一人商業区の方へ自転車を走らせた。しかたなく、紫音と茜は二人で帰ることにした。
 妖孤である茜には、住む家はない。だから、今現在は麟紅と紫音の家に居候する形で同居している。このことを知っているのは当事者の三人と朽葉だけである。

「帰りにどこか寄っていきます?」

 茜に視線を向けながら紫音は尋ねた。
 聞かれた茜は片手を振って答えた。

「今日は遠慮します。どこか寄られるんでしたらついて行きますよ」

「何かあんたたちの会話は堅っ苦しいわね」

 ひゃあ! と二人同時に飛びのいた。飛びのいた間から藍奈がぬっと現れた。頭頂部が紫音の目線の下にある藍奈は、二人の間に割り込むように歩調を合わせた。

「リンクのヤツはどっかに行ったみたいね」

「え? あ、はい……兄さんはなんか用事があるみたいで……」

「じゃあさ、今日ちょっとあんたの家に行ってみていいかしら?」

 え、と紫音の顔が青くなった。茜は何のことかよくわかっていない。

「え、え、今からですか……?」

「もちろん」

 茜が御冠神楽家に同居していることは藍奈は知らない。知られるとややこしいことになると麟紅が判断したからだ。
 紫音は混乱の視線を茜に向けた。茜は首を傾け、ほえ? と呟いた。