「いくつも魔術集団があれば、国と国の関係みてぇに争いが起きる。ほんの些細なことでな。その状況に悩まされた世界の賢者たちは、すべての魔術集団を束ねる、いわゆる国連みてぇなもんを作ろうと考えた。それが【絶対的義と法の教会(アブソリュート)】。俗に【教会】って言われるやつだ。名前ぐらいは知ってんだろ?」

 尋ねられ、麟紅は首肯で答えた。以前、紫音に聞いたことがあった。そこに、昔自分の父親が所属していたことも。

「【教会】が他の魔術集団を統治すると同時に、逆にそれに反発しようとするやつらが現れた」

「正義があれば悪がある、ってのと同じだな……」

 何気なく、麟紅は呟いた。カーキーもそれをわかってくれたのか、何事もなかったかのようにスルーした。

「反発するものは互いに協力し、一つの魔術集団へと発展した。それが、<黄金の暁>。“禁忌”だろうが犯罪だろうが平気で犯す、最悪の奴らだよ……」

「そいつらが、俺の中にいる帝を狙ってるってのか?」

「ああ」

 沈黙が五人を包んだ。
 それから一言もなくエレベーターまでたどり着き、そのまま無言のまま外へ出た。

「詳しい話は夕方、事務所でしよう」

 カーキーはそれだけ言うと、璃寛と朽葉と共にその場を去っていった。麟紅たちも、迎えに来た車に乗って高等部の校舎へ向かった。